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2023年10月に開始されたインボイス制度は、消費税の「仕入税額控除」に大きな影響を与えました。しかし、その影響は消費税だけに留まりません。法人税の「交際費」計算にも影響が及ぶ上、2024年4月からはその交際費のルール自体に大きな変更がありました。
最新の情報を知らないままでは、本来経費にできるはずの支出が認められず、納税額が増えてしまう可能性があります。本記事では、インボイス制度と新たな交際費のルールが実務にどう影響するのか、具体例を交えて徹底解説します。
まず、インボイス制度が法人税上の交際費にどう影響するのかをおさらいします。ポイントは、仕入税額控除ができない消費税額は、その経費本体の金額に含めて法人税の計算を行うという点です。
取引先との会食で11,000円(税抜10,000円、消費税1,000円)を支払ったケースで見てみましょう。
消費税:支払った消費税1,000円は仕入税額控除の対象です。
法人税:交際費として計上される金額は、税抜の10,000円です。
消費税:支払った消費税1,000円は仕入税額控除の対象外です。
法人税:交際費として計上される金額は、消費税額を含む11,000円となります。
このように、適格請求書の有無で、法人税の計算対象となる交際費の金額が変わってしまうのが基本のルールです。
ここからが本題の最新情報です。従来、取引先との飲食費のうち「1人あたり5,000円以下」のものは交際費に含めず、「会議費」などとして全額を損金(経費)にできました。この基準が、2024年4月1日以降に支出する飲食費から「1人あたり10,000円以下」に引き上げられました。
改正前(~2024年3月31日)・・・ 1人あたり 5,000円 以下
改正後(2024年4月1日~)・・・ 1人あたり 10,000円 以下
これは多くの企業にとって非常に有利な改正です。例えば、2人で会食して合計15,000円(1人7,500円)だった場合、以前は交際費として処理する必要がありましたが、新ルールでは全額を会議費などとして損金算入できます。
この10,000円の判定においても、インボイス制度は影響します。税抜経理の会社が適格請求書を受け取れなかった場合、税込金額で判定する必要があり、10,000円の基準を超えやすくなるため、引き続き証憑の確認は重要です。
資本金1億円以下の中小企業には、「年間800万円までの交際費は全額を損金に算入できる」という特例があります。今回の改正により、1人あたり10,000円以下の飲食費がそもそも交際費にカウントされなくなったため、この800万円の貴重な枠を、より重要な接待費用などに集中して使えるようになりました。
インボイス制度に対応して仕入税額控除を確実に受け、さらに10,000円基準を活用することで、交際費に関する税務上のメリットを最大限に享受できます。
インボイス制度への対応に加え、毎年のように変わる税制改正を正確にキャッチアップし、経理実務に落とし込むのは大変な作業です。
●「最新の税制改正の内容が自社にどう影響するかわからない」
●「従業員が受け取る領収書が、インボイスや新ルールの要件を満たしているかチェックしきれない」
●「経理の負担が増える一方で、コア業務に集中できない」
このようなお悩みは、経理業務の仕組み化で解決できます。
ファーストパートナーズ会計事務所では、クラウド会計の導入や経理BPO(アウトソーシング)を通じて、お客様が複雑な制度改正に煩わされることなく、有利な税制を最大限活用できる体制づくりを支援します。
目まぐるしく変わるルールに的確に対応し、会社の利益を守るために。実務で迷われた際は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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